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srunとsbatchの-n(--ntasks)オプションの挙動の違いについて

登録日 :2024/10/31 04:36
カテゴリ :SLURM

SLURMにおいて、sbatchとsrunの-n(または--ntasks)オプションの挙動が異なる理由は、これらのコマンドの役割と使用コンテキストの違いにあります。以下に詳細を説明します:

  • sbatchの場合:
    sbatchはジョブ全体のリソース要求を定義します。
    -nオプションは、ジョブ全体で実行するタスクの総数を指定します。
    これらのタスクは、割り当てられたノード間で分散される可能性があります。
    例:sbatch -n 10 myscript.sh は、10個のタスクを持つジョブを提出します。

  • srunの場合:
    srunは通常、sbatchスクリプト内で使用され、個々のジョブステップを開始します。
    -nオプションは、そのジョブステップ内で起動するタスクの数を指定します。
    これらのタスクは、sbatchで割り当てられたリソース内で実行されます。
    例:sbatchスクリプト内の srun -n 5 myprogram は、5つのタスクを持つジョブステップを開始します。

主な違い:

  • スコープ:
    sbatchはジョブ全体に対して適用されます。
    srunは特定のジョブステップに対して適用されます。

  • リソース割り当て:
    sbatchの-nは新しいリソースを要求します。
    srunの-nは既に割り当てられたリソース内で動作します。

  • 柔軟性:
    sbatchでは、-nと--nodesを組み合わせてノード数とタスク数を制御できます。
    srunでは、通常、既に割り当てられたノード内でタスクを分散します。

  • デフォルトの動作:
    sbatchのデフォルトは通常1タスクです。
    srunのデフォルトは、利用可能なすべてのCPUコアを使用することがあります。

  • MPI との相互作用:
    srunの-nは、MPIプログラムのランクの数を直接制御することがあります。
    sbatchの-nは、全体的なジョブサイズを定義します。

これらの違いにより、ジョブスクリプトの作成時には、sbatchとsrunのオプションを適切に組み合わせて使用することが重要です。ジョブ全体のリソース要求にはsbatchを使用し、個々のジョブステップの実行にはsrunを使用するのが一般的なパターンです。

srun マルチコア、マルチスレッドのアプリケーションの場合の挙動

srun -n 120 --pty bash コマンドを1ノード40コアの計算ノード3つがある環境で実行した場合、以下のような挙動が予想されます:

  • タスク数:
    -n 120 オプションにより、120個のタスクが要求されます。

  • ノード割り当て:
    3つのノード(各40コア)で合計120コアが利用可能なため、すべてのノードが使用されます。

  • タスク分配:
    120タスクが3つのノードに均等に分配されます。つまり、各ノードに40タスクが割り当てられます。

  • CPU使用:
    各ノードの40コアがフルに使用されます。1タスクあたり1コアが割り当てられます。

  • インタラクティブセッション:
    --pty bash オプションにより、割り当てられたリソース上でインタラクティブなbashセッションが開始されます。

  • 実行環境:
    このbashセッションは、3ノードにまたがる120個のタスク(プロセス)を持つ並列環境で実行されます。
    各タスクは独立したプロセスとして動作し、それぞれが1つのCPUコアを使用します。

  • MPI環境:
    このセッション内でMPIプログラムを実行すると、120のランクを持つMPI環境として動作します。

  • リソース利用:
    すべてのノードとコアが完全に利用されるため、システムのリソースが最大限に活用されます。

  • 注意点:
    この設定は、各タスクが1コアを使用する場合に最適です。
    マルチスレッドアプリケーションの場合、この設定は適切でない可能性があります。
    実際の挙動は、SLURMの具体的な設定やジョブスケジューラの状態によって若干異なる場合があります。
    このコマンドは、大規模な並列計算や、多数のタスクを同時に実行する必要があるワークロードに適しています。ただし、具体的なアプリケーションの要件に応じて、--cpus-per-task や --ntasks-per-node などの追加オプションを使用して、より細かくリソース割り当てを調整することもできます。

srunでマルチスレッドのアプリケーション実行の注意点

マルチスレッドアプリケーション(特にFluent等の商用CFDソフトウェア)の場合、srun -n 120 --pty のような設定では、CPUを100%効率的に使用できない可能性が高いです。これには以下のような理由があります:

  • タスク数とスレッド数の不一致:
    -n 120 は120個の独立したタスク(プロセス)を要求しますが、マルチスレッドアプリケーションは通常、より少数のプロセスで多数のスレッドを使用します。

  • リソースの過剰割り当て:
    各タスクに1コアが割り当てられますが、マルチスレッドアプリケーションは通常、1プロセスで複数のコアを使用します。

  • メモリ帯域幅の制限:
    多数の小さなタスクを実行すると、メモリアクセスの競合が発生し、パフォーマンスが低下する可能性があります。
    Fluent等のマルチスレッドアプリケーションを効率的に実行するためには、以下のようなアプローチを検討してください:
    --cpus-per-task オプションの使用:

srun -n 3 --cpus-per-task=40 --pty fluent

これにより、3つのノードそれぞれで1つのFluentプロセスが40コアを使用して実行されます。
--ntasks-per-node と --cpus-per-task の組み合わせ:

srun --ntasks-per-node=1 --cpus-per-task=40 -N 3 --pty fluent

各ノードで1つのタスク(プロセス)が40コアを使用します。

  • 環境変数の設定:
export OMP_NUM_THREADS=40
srun -n 3 --cpus-per-task=40 --pty fluent

OpenMPスレッド数を明示的に設定します。

  • Fluentの並列処理オプションの調整:
    Fluent自体の並列処理設定(例:-t オプション)をSLURMの設定と一致させます。

  • ハイブリッド並列化の考慮:
    MPIプロセス数とOpenMPスレッド数の最適な組み合わせを見つけることが重要です。

  • メモリ設定の最適化:
    --mem オプションを使用して、各タスクに適切なメモリを割り当てます。

  • GPUの利用(可能な場合):
    Fluentがサポートしている場合、--gres=gpu:X オプションでGPUリソースを割り当てます。

最適な設定は、具体的なFluentのバージョン、問題のサイズ、ハードウェア構成によって異なります。異なる設定を試し、パフォーマンスを測定して、最適な構成を見つけることが重要です。また、Fluentのドキュメントや、使用しているHPC環境の管理者からのアドバイスも参考にすると良いでしょう。

sbatchでの、マルチスレッドのアプリケーションを動かす場合も、srunのように--cpu-per-taskのオプションはなくても適切に動いているように見える。

sbatchとsrunの動作の違いは、ジョブの提出方法と実行コンテキストに起因します。以下に詳細を説明します:

  • sbatchの動作:
    sbatchはジョブスクリプトを提出するためのコマンドです。
    デフォルトでは、割り当てられたノード上のすべてのリソース(CPUコアを含む)を使用できます。
    マルチスレッドアプリケーションは、明示的に制限しない限り、利用可能なすべてのCPUコアを使用できます。

  • srunの動作:
    srunは通常、個々のタスクやジョブステップを開始するために使用されます。
    デフォルトでは、1つのCPUコアのみを割り当てる傾向があります。

  • リソース割り当ての違い:
    sbatchで提出されたジョブは、通常、ノード全体または指定されたリソースセット全体にアクセスできます。
    srunは、より細かい粒度でリソースを制御するために使用されることが多いです。

  • 環境変数の影響:
    sbatchで提出されたジョブは、システムやユーザーの環境変数を継承します。
    これには、OMP_NUM_THREADSなどのスレッド数を制御する変数も含まれる可能性があります。

  • SLURMの設定:
    クラスタの設定によっては、sbatchジョブにデフォルトでより多くのリソースが割り当てられる場合があります。

  • アプリケーションの動作:
    多くのマルチスレッドアプリケーションは、利用可能なCPUコアを自動的に検出して使用します。
    sbatchで提出された場合、これらのアプリケーションは通常、割り当てられたノードのすべてのコアを見つけて使用できます。

  • ジョブスクリプトの柔軟性:
    sbatchで使用されるジョブスクリプトでは、環境変数の設定やリソース要求の指定など、より複雑な設定が可能です。

  • 明示的なリソース指定:
    sbatchでも--cpus-per-taskオプションを使用できますが、指定しない場合はデフォルトでより寛容なリソース割り当てになる傾向があります。

結論として、sbatchはジョブ全体のリソース割り当てを管理し、通常はより寛容なデフォルト設定を持っています。一方、srunはより細かいリソース制御に使用されるため、明示的な指定がない場合はより制限的な動作をする傾向があります。マルチスレッドアプリケーションを実行する際は、sbatchの方がデフォルトでより多くのリソースを利用できる可能性が高いのです。
ただし、最適なパフォーマンスを得るためには、アプリケーションの要件に応じて適切なリソース要求を明示的に指定することが推奨されます。